屋根を修理したいと考えている方に向けて、火災保険で屋根修理をする際に知っておきたい基礎知識を解説します。
火災保険を利用して屋根修理を検討する際に、「適用できるのか」「全額保険金が受け取れるのか」「どのように申請するのか」といった不安を感じる方もいるでしょう。確かに屋根修理において、火災保険が適用されなかったり、自己負担額を課せられたりすることはあります。
そこで今回の記事では、火災保険適用する屋根修理について基礎知識を解説します。本記事を参考にしていただくことで、損失を避け、スムーズに屋根修理を進めることができるでしょう。
火災保険で屋根修理をする際の基礎知識
まず、火災保険を利用した屋根修理に関する基礎知識を解説します。
屋根修理は頻繁に行うものではなく、多くの人が十分な知識を持たないまま依頼しているのが現状です。ただし、基礎知識を持つことで、屋根修理の費用を抑えられる可能性があります。まずはご紹介する基礎知識を押さえて有利な状況で修理をできるようにしましょう。
基礎知識1:保険料・保険金・見舞金の違い
火災保険を利用する際には、「保険料」「保険金」「見舞金」の違いを把握することが重要です。
【それぞれの違いについて】
- 保険料:加入者が保険会社に支払う掛け金のこと
- 保険金:有事の際に保険会社が加入者に支払う費用のこと
- 見舞金:有事の際に保険会社が加入者に支払う修理以外にかかる費用のこと
加入者が補償を得る代わりに支払う費用が「保険料」です。対して保険料を支払った加入者に対して、保険会社が支払うのが保険金。そして屋根修理以外にかかる費用が保険会社から支払われた場合は、見舞金に分類されます。たとえば屋根修理が完了するまでのホテル宿泊費などです。
火災保険を利用する際には「保険料」「保険金」「見舞金」がありますが、それぞれの違いについて把握しておきましょう。
基礎知識2:火災保険とすまいの保険の違い
「火災保険」と「すまいの保険」は同一の保険商品を指します。保険会社によって名称が異なるだけで、内容は従来の火災保険と変わりません。
昨今では火事よりも、自然災害で火災保険を利用する方が増えたため「火事に備える保険」との意味である「火災保険」から、「住まいに備える保険」に名称が変更する保険会社が増加しました。そのため、「すまいの保険」と「火災保険」は同一の保険であると理解しておきましょう。
基礎知識3:火災保険と共済の違い
最後に、「火災保険」と「共済」の違いについて解説します。
【それぞれの違い】
- 火災保険:民間の保険会社が、支払われた保険料を元に保険金を支払う
- 共済:非営利団体が集めた資金から共済金を支払う
火災保険とは保険会社が提供するサービスであり、保険料を支払った方に対して、有事の際に保険金を支払います。ただし、共済では保険会社の「見舞金」に近い金額やサービスが提供されることが特徴です。有事の際には、集まった資金から共済金を支払う点では火災保険と似ています。
しかし、共済では保険会社の「見舞金」に近い金額・サービスが提供されるのが特徴です。屋根修理で共済金を受け取ったとしても、火災保険よりも補償の内容がそれほど手厚くないことが多いでしょう。
このように、費用を支払っていれば、有事の際に屋根修理の費用を補償してもらえる点は共通しています。しかし、火災保険のほうが補償が手厚く、共済はあくまでも見舞金のような形で補償が受けられるのが大きな違いです。
火災保険で屋根修理が補償されるケース
ここからは、火災保険が適用される屋根修理のケースについて解説します。火災保険で屋根修理ができるのは、主に自然災害により屋根に支障が生じた場合です。
火災保険の内容によりますが、次の3つのケースでは補償が受けられる可能性が高いと考えられます。
ケース1:風災
まずは「風災」です。風災とは、風が原因で住宅に被害が生じる災害のことを指します。たとえば台風・竜巻・突風・暴風が考えられるでしょう。
風災では、飛来物の衝突によって屋根が壊れたり、瓦や屋根材が風で吹き飛ばされたりすることがあります。また、屋根の損傷により雨漏りが発生する場合もあります。
火災保険で「風災」と認定されるには、「風速20メートル以上の風があったこと」が条件であることがほとんどです。そのため風速20メートルに満たなかったときの屋根の故障では、風災が適用されないこともあります。保険会社により変わるでしょうが、風速20メートル以上の風災により屋根が壊れた場合、屋根修理への火災保険適用が可能です。
ケース2:ひょう災
「ひょう災」が起きた場合も、屋根修理に火災保険が適用される可能性があります。ひょう災とは、ひょうが降ったことによる住宅への被害のことです。たとえばひょうが降って屋根が壊れた、屋根に凹みができてしまったなどが代表的でしょう。
「ひょう」とは粒が直径5mm以上の氷が降ってくることを指します。5mm以下の氷の粒であれば「あられ」であるため、ひょう災被害とは認定されないかもしれません。しかしまれに直径30センチ以上の氷の粒が降ることもあり、屋根への被害は甚大となると考えられます。
ひょうによる屋根への被害が大きい場合、条件を満たせば火災保険を利用した屋根修理が可能になると考えられます。
ケース3:雪災
火災保険での屋根修理が可能なケースとして、「雪災」もあります。雪災とは雪が多く降り、住宅がダメージを受けることを指します。大雪が屋根に積もって屋根が変形してしまったり、壊れてしまったりなどのケースは珍しくありません。
雪が多く積もると、非常に重い重量となります。たとえば、屋根に10センチの積雪があるだけで約2,000kgの重量になることがあります。雪への対策が行われていない状態で大雪に見舞われると、雪災が発生する可能性が懸念されます。
ケース4:落雷
落雷によって屋根が壊れてしまったときも、火災保険の対象となる可能性が高くなります。
落雷は季節を問わず、いつでも起こり得ることです。火災保険の種類によっては、落雷への補償が含まれている場合、悪天候時の有事にも補償が受けられる可能性があります。
ケース5:外部からの衝撃
天災以外で外部からの衝撃を受けた場合でも、屋根修理に火災保険が適用されることがあります。たとえばデモや抗議活動、盗難による住宅破壊、風災以外での飛来物の衝突など。最近ではドローンが墜落したなどの事故でも火災保険が適用されることがあります。
これは、第三者による屋根の破壊と考えられます。外部からの衝撃による屋根破壊でも、修理をする際に火災保険が適用されることがあります。
【注意】火災保険で屋根修理が補償されないケース
火災保険で屋根修理が補償されるケースについて解説しました。しかし一方で、補償が受けられそうに思えても適用されないケースもあります。
そこで実際の保険金を請求する前に、火災保険で屋根修理が補償されないケースについても知っておきましょう。
ケース1:屋根リフォーム・リフォーム時の損害
屋根をリフォームする場合、もしくはリフォームをした後に損害が生じた場合は、屋根修理をしたとしても火災保険は適用されません。火災保険はリフォームでは一切適用されないためです。
火災保険は、火災や自然災害による住宅への損傷を補填するための保険です。劣化した住宅を修理する場合、火災保険の保険金は支給されませんので注意が必要です。
ケース2:経年劣化
屋根修理で火災保険が適用されない次のケースは、経年劣化です。前項でも解説したように、住宅の劣化は保険適用対象外となります。
たとえば経年劣化によって屋根材に傷みが出てきた、瓦がはがれたなどの場合は火災保険は利用できません。
ケース3:初期不良
次に、初期不良による屋根修理について解説します。たとえば住宅を建ててすぐに雨漏りが見つかった、屋根の不具合が発見されたなどの場合が該当します。
初期不良は事故ではなく、施工業者のミスとみなされます。保険制度が用意されている場合、施工業者の保険で修理できるかもしれません。ただし火災保険では適用外となります。
ケース4:被保険者の過失・故意の損害
最後に解説するのは、被保険者の過失や故意による損害です。テレビのアンテナを修理しようとして、誤って屋根材を傷つけてしまったときなどは「過失」とされます。
過失や故意の損害は偶発的な事故ではありません。火災保険は「災害や事故による損害を補うもの」という性質を持つ保険であり、過失や故意による損害への適用は困難と考えられます。
屋根修理の火災保険適用条件
屋根修理では火災保険が適用されないケースもあると解説しました。では、適用されるためにはどのような条件が必要なのでしょうか。
火災保険が適用される基本的な3つの条件について解説します。
条件1:損傷が発生してから3年以内であること
まず、火災保険の請求は、実際に損傷が発生してから3年以内でなければなりません。3年が経過すると、そのほかの条件に該当していたとしても保険金を受け取れなくなります。
天災や火災などで火災保険を利用して屋根修理を行う場合は、できる限り早く保険会社に請求を行う必要があります。また、修理をせずにそのまま放置しておくと、気付かないうちに3年が経ってしまうことも考えられます。火災保険適用となりそうな屋根修理であれば、早めに修理・申請を行うのがおすすめです。
条件2:修理費用が20万円以上であること
修理費用が20万円以上であることも、適用条件の一つです。火災保険の種類によりますが、「20万円以上の損害の補填であること」が条件となっている火災保険があります。この条件が課されている場合、たとえば19.5万円の修理費用では火災保険の適用条件を満たさないことになります。
適用条件を満たさない場合、実際に火災や天災による屋根の損害で修理を行ったとしても、保険金を受け取ることはできません。ただし、屋根の修理では足場工事が必要となることが多いものです。足場工事の費用もあわせて申請をすれば、ほとんどのケースで20万円以上となるでしょう。
また、火災保険の中には「20万円以上」という条件を課していない商品もあります。保険内容をしっかりと把握し、修理費用も含めて火災保険適用の条件を満たすようにしましょう。
条件3:保険契約内容の確認ポイント
最後に、保険契約内容を確認することも重要です。なぜなら火災保険の契約内容や種類により、補償される部分が変わることがあるためです。
たとえば、前項で解説した「損害が20万円以上であること」も、保険契約内容によって異なる条件です。中には、損害額の指定がない火災保険商品や、高額な修理でなければ適用されない場合もあります。したがって次のようなポイントをあらかじめ確認してください。
【確認ポイント】
- 保険適用対象となる災害の種類
- 適用となるための損害額の金額
- 実際の被災から3年以内であること
- 免責金額
災害の種類や損害額の金額によって、屋根修理に火災保険が適用されるかどうかが決まること、また、実際の被災から3年以内に保険金を請求する必要があることについては、既に解説しました。たとえば天災による屋根修理であっても、5年前の災害で10万円以内の修理をするなら、保険金は受け取れないでしょう。
さらに確認すべき重要なポイントとして、「免責金額」があります。免責金額とは、自己負担額を指します。免責金額とは、自己負担額を意味します。修理金額が免責金額を超える場合、超過した分の金額が保険金として支払われます。「免責方式」と呼ばれていて、保険の契約の際に、自己負担する損害額をあらかじめ設定しているはずです。
たとえば屋根修理費用が20万円であったとしても、免責金額が10万円であれば、10万円は自己負担となります。そして免責金額を超過した10万円を、保険金として受け取れる仕組みです。
屋根修理で火災保険が適用されるとしても、免責金額の設定により、実際に受け取れる保険金の金額は変わるでしょう。火災保険を利用して修理を行う際は、解説した4つのポイントを確認し、どの程度の保険金を受け取れるか試算しましょう。
火災保険申請の具体的な手順
これから屋根修理にあたって火災保険申請を行いたいと考えている方に向けて、申請のための具体的な手順を解説します。ご紹介する5つのステップどおりに申請を行っていけば、問題なく手続きを完了できるでしょう。
ステップ1:被害状況の確認と記録
最初にするべきなのは、損害状況の確認と記録です。損害が発生した場所の写真を、さまざまな角度から撮影してください。損害の内容をメモしておくことで、後に役立つ可能性があります。
ステップ2:保険会社への連絡
被害状況を記録した後は、保険会社に連絡を行ってください。連絡をすると、保険金請求書類などの必要書類を送付してもらえます。また損害状況の立ち会いがあることもあるでしょう。
ステップ3:修理業者の選定
次は屋根修理業者の選定を行います。複数の業者に連絡をして、火災保険を使うことを伝えたうえで見積もりを依頼してください。「損害額が20万円以上」が条件とされている火災保険であれば、条件を満たす修理金額を提示してもらえるか、確認することも大切です。
ステップ4:申請書類の作成と提出
修理業者が決まったら、火災保険申請書類と作成と提出を行います。申請に必要となるのは次のとおりです。
【必要書類】
- 保険金請求書
- 事故状況説明書
- 修理工事の見積書
- 被災箇所の写真
上記の必要書類がそろったら、郵送などの方法で保険会社に申請を行ってください。
ステップ5:保険会社の査定と支払い
保険会社に申請を行ったら、最終段階である査定と支払いの段階です。
申請を行うと保険会社から鑑定人が派遣されることがあり、申請内容と事実に違いがないかの確認がされるでしょう。鑑定された結果に問題がなければ、損害に基づいた保険金支給が行われます。
【要注意】火災保険と屋根修理にまつわるトラブル
屋根修理では火災保険を適用できることがありますが、保険を利用することで次のようなトラブルが起きることもあります。
飛び込み業者による高額な見積もり書の提示
飛び込み業者が調査も行わずに「火災保険で無料になります」と説明する場合は、注意が必要です。
「火災保険で屋根の修理を無料でできる」という営業をしてくることが特徴です。しかし無料になることはほとんどなく、後から「保険金が少なかったから手数料を支払ってほしい」と言ってきます。中には解約金や違約金を請求されることも。自己負担額がかからないと強調されたにもかかわらず、高額な自己負担金を請求されたケースもあります。
飛び込み業者が、調査もなく「火災保険で無料になります」と言う場合は注意するべきです。後からさまざまな理由で費用を請求される可能性もあります。
日本損害保険協会も悪徳業者への注意を呼びかけ
損害保険会社を統括する「日本損害保険協会」も、悪徳業者に対する注意喚起を行っています。日本損害保険協会にはあいおいニッセイ同和損害保険やセコム損害保険、損害保険ジャパンなど、大手の損害保険会社が加盟。
注意喚起が行われていることは、火災保険を利用した屋根修理に関連するトラブルが多いことを示していると考えられます。
【まとめ】火災保険を使った屋根修理
いかがでしたでしょうか?本記事をお読みいただき、火災保険を適用した屋根修理について理解を深めていただけたのではないでしょうか。
屋根修理には火災保険を適用できる場合がありますが、適用には一定の条件があります。また、「火災保険で無料修理できる」とする飛び込み営業の話を信じるのは危険です。
「屋根のエイト」はイタリア大使館からの依頼を受けた実績があり、施工保証10年・損害賠償保険にも加入しています。屋根修理をご検討中の方に、安心感のある提案を行います。